札幌国際芸術祭2014レポート

2014.Sep.25

札幌国際芸術祭2014レポート

みなさんこんにちは。
今年初めての開催となった札幌国際芸術祭2014にcultra運営事務局も駆け込みで取材に行ってまいりました。
初めて北海道に降り立ち、札幌という土地に全く疎いスタッフが短い時間の中で芸術祭を堪能すべく、メイン会場のみを駆け足で回った鑑賞記録をレポートいたします。

 
羽田空港からおよそ1時間半、あっという間に新千歳空港に到着します。
新千歳空港から札幌都心行きのバスを利用し、順調に道立近代美術館へと到着いたしました。


北海道立近代美術館は1977年に札幌の中心に開館した、市民に親しまれる美術館です。
清潔感のある外観に一歩入ると、意外にも重厚な雰囲気が広がっています。
少し時代を感じさせるとともに、ほっとする雰囲気があるエントランスです。


札幌国際芸術祭のメインとも言えるであろうこちらの道立近代美術館、稀に見る質の良い作品展示を見ることができました。
まず印象深いのがこちらの作品。
インド人アーティスト、スボード・グプタによる「ライン・オブ・コントロール(1)」です。
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雑多な物で形成された禍々しいきのこ雲のようなこの作品は、主にステンレスの日用品で構成されています。
伝統的に用いられてきた真鍮や銅の食器や儀式用の品々に代わって、日常を独占するステンレス用品で作られたきのこ雲は重厚感のある近代美術館の中で、静かに佇んでいました。
かなりストレートに社会問題に言及した作品ですが、食器たちが丁寧に積み重ねられているからなのか、意外にも物体としての魅力に溢れ、いつまでも眺めていたくなるような温かみもある印象を受けました。
 
そしてもう一点、すぐ隣にあるアンゼルム・キーファーによる「メランコリア」もまた、この吹き抜けの空間で遺憾なく魅力を発揮していました。


通常、福岡市美術館で所蔵されているこちらの作品は、札幌国際芸術祭という文脈において、という以上に作品自体の力で道立近代美術館でも様々な時間の流れや歴史についての風格を漂わせているのを感じました。
 
2つの大きな作品を後にして螺旋階段を登ったところに、畠山直哉の写真群が待っていました。


 

 



最盛期を通り過ぎた炭鉱の町を撮影した写真たちは、正に「近代」を捉えた展示です。
こちらの壁面も吹き抜け部分に面しており、厚みのある美術館の建物と写真の内容が同じ方向を向いているような、展示空間の完成度を感じました。
 
この後、突然雪の結晶を作る明るい実験室にたどり着きます。
カールステン・ニコライによる「snow noise」は人工雪を作る様子を展示しています。
カールステン・ニコライはこの後訪れる芸術の森美術館で全く別の作品を展示しています。そちらでは鏡面に囲まれたプロジェクターで激しく明滅する映像体験をすることになるのですが、こちらでは静かに雪が結晶を実らせていく姿を観察することができます。
 
この後、中谷宇吉郎の研究成果である雪の結晶、火花放電の写真展示を高谷史郎が手がけた展示に連なって、高谷史郎本人による、中谷宇吉郎へのオマージュ作品「Ice Core」も展示されていました。
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この作品は中谷宇吉郎の回顧展がラトビア国立自然史博物館で開催された際に、展示された作品ということです。
中央、上から下に流れていく白い物体は2005年に掘削された氷床コアの一部で、右側の数字はその氷がもといた深度(単位:mm)を表し、左側の数字はその氷の年代(単位:○年前)を表しているそうです。
自然科学的な資料を羅列されているだけにも関わらず、映像に目が釘付けになってしまうかっこ良さはさすが、としか言いようがありません。
 
かなり駆け足でしたが近代美術館の展示についてのご紹介は大まかに以上となります。
大御所作家の有名作品を一度に見ることのできる特別な様子を目の当たりにし、札幌国際芸術祭、なかなかやるな・・・。という印象で今度は次なるメイン会場、札幌芸術の森美術館に向かいます。
 
札幌国際芸術祭開催期間中は、近代美術館から無料のシャトルバスが出ています。バスに揺られること約40分、かなり都会の中心からは外れたな、、という心細さも募る頃、札幌芸術の森美術館に到着します。
芸術の森美術館に着いた瞬間にここが試される大地であることを思い知らされます。
とにかく、寒いです。これから訪れる方、大げさじゃないか、という服装で挑んでください。
都合により遅い時間にスタートしたため向かっている途中で日が暮れてしまい、外観等の写真を撮ることができませんでした。
 
さて、最初にご紹介するのはエントランスのすぐにある、砂澤ビッキの作品、「風に聴く」です。
 

 
普段、現代美術館などを訪れているとあまり目にすることのない種類の作品ですが、素朴な風合いに意外にも惹かれるものがありました。何か実用的な道具のような、あるいは手を差し伸べてくる人の形のような、4つの木彫があちらこちらを向いている様子が可愛らしく感じる経験はあまり無かったので不思議な感覚です。
 
この後も森林に関する作品が続きます。
 

平川祐樹さんによる「Vanished Forest」は、見ての通り、頭上には森林を見上げたような映像が並び、覗きこむ形で切り株の映像が展示されています。
切り株の上にはキノコが生えたり蟻が這っていたりするのですが、肝心の樹木の幹が喪失している状態が作り出されています。
この作品の展示されている芸術の森美術館は、その名の通り森の中にあり、樹木に囲まれた場所にあるのですが、その建物の中で森林が喪失されたことがテーマの作品が展示されている、という状況にも不思議な感覚を覚えます。
 
そして宮永愛子さんの「そらみみそら(mine・札幌)」では、突然繊細な陶器が床に、そして錆びついた滑車の上に並べられています。
 

 
こちらの作品は、高温で焼きあげられた釉薬が冷やされていく過程でヒビが入る時に鳴る音の展示する、サウンドインスタレーションなのですが、いつ鳴るのか、その音を聴くことができるかは全く予想ができません。
その場にいらした美術館の方に、ヒビが入る(貫入)の音がどんな音なのか、詳しく根堀葉掘り聞き、しずしず周囲を歩き回り、それでも鳴らないので諦めようとした時に、ついに聴くことができました。釉薬にヒビの入る音は確かに細やかなのですが、意外にも力強い音がしました。固まりつつある釉薬を割る力が、徐々に徐々に溜まっていっていたものが爆発した瞬間に立ち会えたことがとても嬉しかったです。また、それまでの静かな空間の中にも、次に聞こえてくる貫入の音までの力を溜め込んでいる運動が行われているという想像を巡らせて初めて、札幌に流れる水の由来と都市の歴史がモチーフになっているということが理解できた気がしました。
 
松江泰治さんは「JP-01 SPK」というタイトルでそれぞれの季節の札幌の町を精密かつ均質に写した写真群を展示しています。
また、写真の向かいには、この写真がじわじわと動いて上空を移動しながら町を眺めているような気分になる映像が展示されていました。
 

 
地元の方と思われる方々が、食い入るようにこの写真たちを見つめ、被写体となっている景色に身近な建物や場所を見出しているのを目の当たりにすることで、より感慨深い作品でした。札幌や北海道に関連の深い作品が多く展示されていたので、きっと地元の人々は、観光客として外からやってきた私達とは違った感想を持つのだろうな、と、想像を膨らませました。地元の人たちにとって、今回の札幌国際映画祭2014は、どんな芸術祭だったのでしょうか。そんな視点を持つことも持つこともできます。
 
最後にしっかりと中谷芙二子さんによる霧の彫刻を見ることもできました。

 

旅行者の視点で味わう札幌国際芸術祭も、他では見られない良質な体験ばかりでした。
 
以上、北海道立近代美術館と札幌芸術の森美術館、二つの会場で札幌国際芸術祭を鑑賞したレポートでした。
訪れた方も、今回は逃してしまう方も、少し雰囲気を味わって頂ければ幸いです。
東京近郊で行われるアートフェスとはまた違った印象を受ける体験となりました。
札幌という土地ならではの文脈のある作品、そして東京近郊では中々見られない規模の美術館は、今回の札幌国際芸術祭の終了後も再び訪れたいと思う場所ばかりです。
 
 
Information
札幌国際芸術祭 2014
主な会場:北海道立近代美術館、札幌芸術の森美術館、札幌駅前通地下歩行空間(チ・カ・ホ)、北海道庁赤れんが庁舎、モエレ沼公園 ほか
※各会場ごとに開館時間(作品鑑賞時間)・定休日が異なります。詳しくはアクセスのページをご覧ください。
会期:2014年7月19日(土)〜 9月28日(日)
 
 
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